高橋徳治商店の高橋社長

2014年3月2週号に掲載したコラムです。

先日高橋徳治商店の交流会に参加した。そして直接お話もさせていただいた。内容は震災から今までのこと、今しか話せない大切なことが中心だった。涙なくしては聞いていられない事実もあり、高橋社長も「感じたことをすぐに言葉にしないでください、市販品の言葉に変えて流してしまわないでください」とおしゃっていた。その迫力に私も文章化することを悩んだが、交流会に参加できなかった方にお伝えすることも私の役目かなと思い、うまく伝わるかどうか心配だが、書いてみた。

震災時、高橋社長は想像を絶するような体験をされ、死は身近にある、確実に誰にでもある、今生きている人全員が死に向かって歩んでいると思われたそうだ。社長自身死を考えたことが2回あったそうだ。死んで楽になりたいと。3つあった工場が津波で全てダメになり、70人以上の従業員を全員解雇し、家族も他県へ避難し、ただやらずには居られなかっただけとおっしゃっていたが、一人ぼっちで会社の片づけを始め、なぜ生きるのかを真剣に考えたそうだ。そんな中、取引先やボランティアの方々が次々訪れ片づけを手伝ってくれるようになったり、家族のいない避難所での他者との生活の中で、『人は人との関わりの中でしか生きられない』と気付き、『許された限られた時間をどう生きるのか』を真剣に考えたそうだ。

震災のフィルターを通すことができるようになった今、何が大切なのか、何が正しい選択なのかが分かるようになり、人として会社の経営者として、何をすべきかが分かるようになったとおっしゃった。

『我ことのように』というキーワードもいただいた。我ことのように相手を思いやる、我ことのように感じる、我ことのようにクレームに対応するなど、子育てにも友人関係にも仕事にも関わる言葉にドキッとした。私はどれほど我ことのように相手を思いやれたか…こんなことができたら、争いも不正もない平和な暮らしができるだろうに。

『皆さんの原点は何ですか?大事な事、譲れないことは何ですか?』と問われた。その原点について「一日に少しの時間でいいから考えてください」とおっしゃった。

そして食べ物の話。「震災発生時、ショックで食べることも忘れていたけれど、配られたおにぎりを食べた30分後に体が温まるのを感じた。私たちの体は食べ物でできているんだ、食べ物は命を与えてくれるものなんだと実感した瞬間だった」と。「だからこそ本当にいいものを、素材が生きているものを、体が応えてくれるものを、おいしいものを作らなければいけないんだ」と。

「消費者・生産者・流通業者は全て対等な関係であるはずなのに、今はあまりにも食べ物が下にみられているから、おかしな事が起こる」とも。「このどこかが声をあげ、まっとうな事を言い続ければ、大手スーパーなどが変わり、コンビニが変わり、世の中が変わる」と。「今のままだと不毛な価格競争しか残らない」ともおっしゃっていた。確かに添加物いっぱいの加工品が幅を利かせているし、食品偽装は相変わらず続いているし、にせものがいっぱいだ。

こんな社長だったからこそ、震災前の1/10の規模といえども、水産加工業者の中でいち早く再建のめどが立ったのだろう。とにかく心の中の核になるものがすごい。私は単刀直入に「3代目といえば、商売を潰すと一般的に言われるのに、どうしてですか?」と聞いてしまった。社長は笑いながら「僕もやばいんだよ」とおっしゃったが、この社長は明らかに違う。覚悟もすごいし、ぶれないものが間違いなくある。一歩も二歩も先ゆく日本人という感じだった。世の中が東北から変わるかもしれない、そうなったらいいのに、と思わざるを得なかった。        平成25年10月     稲川



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