これって何かに似てない?

2014年2月4週号に掲載したコラムです。

新聞報道もされたので、ご存知の方も多いかと思うが、高血圧治療薬ディオバンの話をしたいと思う。ディオバンは世界140カ国で販売され、日本でも2000年から販売が始まった。当初は血圧を下げる効果があるとされただけだったが、そのうち日本の5つの大学から降圧作用のほか、脳卒中・狭心症を抑える効果が高いと論文発表され、日本でも一千億円以上を売り上げる大ヒット商品となった。ところが最近、欧州心臓病学会誌がこの論文に重大な問題があるとして撤回した。なんと5大学全ての研究に、開発した製薬会社の社員が関与していたというのだ。それも統計解析の責任者だったというからあきれてしまった。何のために臨床研究に参加していたかは不明だが、もし販売目的でデーターを操作したのならば、研究者としてあるまじき行為。何を信じていいやら分からなくなってしまう。医療費をだまし取ったともいえるので、訴えられても仕方がないだろう。
私のような末端の薬剤師は、こういう研究から得られる情報を勉強会などで仕入れてきて、自分の知識とし、患者さんに時々お話するのだが、それがそもそも間違っていたとなると腹立たしい。今考えると、同じ系統の薬より合併症を抑える効果が40%以上も高いなんて『おかしい』と気付かなければいけなかったのかもしれない。今回の場合、副作用を隠したわけではなく、人の生命を脅かすものではなかったのでまだましだが、私のような積極的に薬を勧めない薬剤師だって腹がたつのに、本当にまじめに薬剤師業務をしてきた人はなおさらだろう。また、その研究を信じて処方した医師はもっと腹が立つかもしれない。この件に関しては、各大学が調査すると言っているので結果を待ちたいが、徹底究明はされないんじゃないかという見方をする人もいる。日本は国から支給される研究費が少なく、企業からの金銭的支援があってこそ研究ができる仕組みらしいので。
 これって何かに似てない?と思った。一つは農薬の問題。末端薬剤師や医師の心境と、一般農家の心境は似てない?何も知らずに良いと信じ込まされて売ってしまい(使ってしまい)、後々あれは違っていたと知らされる心境。なんか詐欺に加担してしまったような嫌な気分。添加物を使って食品を製造する人だって同じかもしれない。
そしてもう一つはエコナの問題。医療者がいいと言うから信じて飲んでいた患者さんと、トクホのマークがついているからきっと健康にいいのだろうと信じて買い続けた消費者の裏切られたような嫌な気分。なんか似ていない?ひょっとすると、あらゆるところでこんな問題は起こっているのかもしれない。
 どれも明らかな影響がすぐ出るわけではないから、ともするとそんなことがあったことすら忘れてしまいそうになるが、それはいけない、いけない。「ただちに影響はない」ってたしか原発事故の時も聞いた。こうやって丸めこまれて、日々流されていく自分が怖い。2度と起こってほしくないことには、声を上げるのが一番だが、それができなければ、誰が一番得をしたのかをよく考えて、2度と引っかからないぞ!買わないぞ!くらいは思っていたい。
 国や農協の指示に従い農薬を使う一般農家が、知っているならまだしも、自分の健康を脅かし、食べる人の健康にも影響し、自然環境をも悪くしているとも知らされずに農薬を使っているとしたら、気の毒に感じる。電力が足りない、原発は安いと思いこまされ、電力の出先を選べない国民も同じかもしれない。
もちろん情報公開はしっかりしてほしいが、ウソや不正を読み取れるだけの力、「あれっ?おかしい」と思える力はつけておかねばと、自分に言い聞かせた。 
 
平成25年7月


名古屋生活クラブ

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